シャコガイにおける藻類共生の成立
オオシャコガイ (リザード島)
シャコガイの仲間はSymbiodiniumと呼ばれる渦鞭毛藻の仲間を共生藻として持っています。これはサンゴの共生藻と同じ仲間です。サンゴでは共生藻は細胞の中に含まれていることがわかっていますが、シャコガイでは共生藻がどこにあるのか長らく論争がありました。シャコガイの体液の中でシャコガイの血球と一緒にいると考える「体内説」と胃から伸びた管の中にいる「体外説」があり、「体内説」が優勢でした(この場合胃の中は体外と直接つながっているので体の外と考える)。この論争は、1991年にNortonらが体外説を支持する論文を発表して決着がつきました。
ではシャコガイはどのようにして共生藻を手に入れるのでしょう?以前から、シャコガイの卵や若い幼生は共生藻を持たないことがわかっていました。シャコガイの増殖に成功している沖縄県水産試験場八重山支場のスタッフと共同で研究を進めた所、幼生に共生藻を餌として与えても消化されるだけだが、稚貝に変態して数日経つと、胃から細い管(共生管)が伸びて、食べた共生藻の一部がここに入り込むことがわかりました。これが共生成立の瞬間になります。その後、貝の成長にともなって共生管はどんどん伸長・分岐し、多数の共生藻を保持するようになりますが、同時に胃の中では共生藻の消化も行っています。
詳細は Hirose, E., Iwai, K., Maruyama, T.: Establishment of the photosymbiosis in the early ontogeny of three giant clams. Marine Biology, 148 (3): 551-558, 2006. をご覧下さい。