被嚢動物内の系統と進化
ヒカリボヤの若い群体
近年のゲノム研究などから、被嚢(尾索)動物は脊椎動物に最も近縁な現生の動物群であると考えられるようになってきました。私 たち脊椎動物の祖先がどんな動物に由来したのかを考えるためにも、被嚢動物の系統と進化は重要な問題です。しかし、被嚢動物内の系統関係はあ まりわかっていません。また、被嚢動物の祖先がどんな姿でどんな生活をしていたのかもわかっていません。
問題として、被嚢動物で最も大きなグループであるホヤが多様で、特に群体性の種は分類が難しいことや質の良いDNAを得られないことで、ホヤ全体をカ バーした系統解析ができていないことが挙げられます。また、プランクトンであるオタマボヤやタリア(ウミタル、サルパ、ヒカリボヤ)は試料を容易に得られ ません。
被嚢の構造や被嚢細胞の分類からも、群体ホヤの仲間の分類体系は、系統を反映していない可能性が指摘されています。
より多くの群体性ホヤやタリアを材料に加えた分子系統解析をすすめるために、私 たちは他の研究者に協力して、材料の同定と提供を行っています。これを通して、被嚢動物の分類体系を見直すことを目指しています。
群体性ホヤの分類は難しく、良く麻酔され、成熟した標本が必要です。様 々な文献も必要です。一方、様々な群体性ホヤから、生理活性物質が発見されることなどから、容易な分類方法が求められてもいます。ホヤの遺伝子の一部の情 報を「種の名札」として用いる(DNAバーコーディング)ための情報基盤づくりを検討しています。