私たちが新種記載した藻類共生ホヤ (1)
群体性のホヤは、個虫が小さくて構造が単純化しているため、種を区別するのに便利な特徴が少なく、あまり分類学的な研究は進んでいません。だですから、藻類共生ホヤの研究を進めてゆくと、まだ名前(学名)がついていない種をみつけることがあります。私たちはこれまでに7種の藻類共生性ホヤを沖縄島や宮古島で発見し、それぞれ新種として記載しています。このうち6種はネンエキボヤ属(Diplosoma)に含まれます。どれも緑色の小さなシートにしか見えませんが、解剖して個虫の構造を調べると区別することができます。
琉球列島から新種記載された6種のDiplosoma
- Oka, A. T., M. Suetsugu, E. Hirose: Two new species of Diplosoma (Ascidiacea: Didemnidae) bearing prokaryotic algae Prochloron from Okinawajima (Ryukyu Archipelago, Japan). Zoological Science, 22: 367-374, 2005.
- Hirose E, Oka AT: A new species of photosymbiotic ascidian from the Ryukyu Archipelago, Japan, with remarks on the stability of stigma number in photosymbiotic Diplosoma species. Zoological Science, 25 (12) , 2008.
- Hirose E, Oka, AT, Hirose M: Two new species of photosymbiotic ascidians of the genus Diplosoma from the Ryukyu Archipelago with partial sequences of the COI gene. Zoological Science, 26(5): 362–368, 2009.
- Hirose M, Hirose E: DNA-barcoding in photosymbiotic species of the genus Diplosoma (Ascidiacea: Didemnidae) and a description of a new species from the southern Ryukyus, Japan. Zoological Science, 26(8): 564-568, 2009.
藻類と共生するホヤは全てジデムニ科(ウスボヤ科:Didemnidae)に属します。ジデムニ科のホヤの多くは球形や金平糖型の骨片を持っていて、この形は種分類のための特徴として利用することができます。しかし、Diplosomaは骨片を持たないことが属の特徴なので、これを分類はに使えません。私たちは牽引筋と呼ばれる筋肉の位置と鰓孔の数がそれぞれの種によって異なることから、種を区別することに可能にしました。この種分類はミトコンドリアのCOI遺伝子の塩基配列に基づく分子系統からも支持されています。